ら白魚《しらお》のような手を掴《つか》み、足をぶるぶる。」と五助は自分で身悶《みもだえ》して、
「そしてお前《めえ》、死骸《しがい》を見たのか。」
「何を謂わっしゃる、私《わし》は話を聞いただけじゃ。遊女《おいらん》の名も知りはせぬが。」
五助は目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》ってホッと呼吸《いき》、
「何の事だ、まあ、おどかしなさんない。」
十二
作平も苦笑い、
「だってお前が、おかしくもない、血が赤いかの、指をぶるぶるだの、と謂うからじゃ。」
「目に見えるようだ。」
「私《わし》もやっぱり。」
「見えるか、ええ?」
「まずの。」
「何もそう幽霊に親類があるように落着いていてくれるこたあねえ、これが同一《おなじ》でも、おばさんに雪責にされて死んだとでもいう脆弱《かよわ》い遊女《おいらん》のなら、五助も男だ。こうまでは驚かねえが、旗本のお嬢さんで、手が利いて、中間《ちゅうげん》を一人もんどり打たせたと聞いちゃあ身動きがならねえ。
作平さん、こうなりゃお前《めえ》が対手《あいて》だ、放しッこはねえぜ。
一升買うから、後生だからお前今夜は泊り
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