入れて、うっかり払いましたのが、つい、こぼれて、ああ、皆さんのお目に留《とま》ったのでございます。
神職 はて、しぶとい。地獄の針の山を、痒がる土根性《どこんじょう》じゃ。茨の鞭では堪《こた》えまい。よい事を申したな、別に御罰《ごばつ》の当てようがある。何よりも先ず、その、世に浅ましい、鬼畜のありさまを見しょう。見よう。――御身《おみ》たちもよく覚えて、お社近《やしろぢか》い村里《むらざと》の、嫁、嬶々《かか》、娘の見せしめにもし、かつは郡《こおり》へも町へも触れい。布気田《ふげた》。
禰宜 は。
神職 じたばたするなりゃ、手取《てど》り足取り……村の衆《しゅ》にも手伝《てつだ》わせて、その婦《おんな》の上衣《うわぎ》を引剥《ひきは》げ。髪を捌《さば》かせ、鉄輪《かなわ》を頭に、九つか、七つか、蝋燭を燃《とも》して、めらめらと、蛇の舌の如く頂かせろ。
仕丁 こりゃ可《よ》い、可い。最上等の御分別《ごふんべつ》。
神職 退《さが》れ、棚村。さ、神の御心《みこころ》じゃ、猶予《ためら》うなよ。
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――渠《かれ》ら、お沢を押取《おっとり》込めて、そのなせる事、神職の言《
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