、美しき御神《おんかみ》に、嫉妬《しっと》の願《ねがい》を掛けるとは何事じゃ。
禰宜 これ、速《すみやか》におわびを申し、裸身《はだかみ》に塩をつけて揉《も》んでなりとも、払い浄《きよ》めておもらい申せ。
神職 いや布気田《ふげた》、(禰宜の名)払い清むるより前に、第一は神の御罰《ごばつ》、神罰じゃ。御神《おんかみ》の御心《みこころ》は、仕え奉る神《かん》ぬしがよく存じておる。――既に、草刈り、柴《しば》刈りの女なら知らぬこと、髪、化粧《けわい》し、色香《いろか》、容《かたち》づくった町の女が、御堂《みどう》、拝殿とも言わず、この階《きざはし》に端近《はしぢか》く、小春《こはる》の日南《ひなた》でもある事か。土も、風も、山気《さんき》、夜とともに身に沁《し》むと申すに。――
[#ここから4字下げ]
神楽の人々。「酔《よい》も覚《さ》めて来た」「おお寒《さむ》」など、皆《みんな》、襟《えり》、袖を掻合《かきあ》わす。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
神職 ……居眠りいたいて、ものもあろうず、棺《かん》の蓋《ふた》を打つよりも可忌《いまわし》い、鉄槌
前へ
次へ
全55ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング