を掻払《かいはら》う)六根清浄《ろっこんしょうじょう》、澄むらく、浄《きよ》むらく、清らかに、神に仕うる身なればこそ、この邪《よこしま》を手にも取るわ。御身《おみ》たちが悪く近づくと、見たばかりでも筋骨《すじぼね》を悩み煩《わず》らうぞよ。(今度は悠然《ゆうぜん》として階《きざはし》を下《くだ》る。人々は左右に開く)荒《あら》び、すさみ、濁り汚れ、ねじけ、曲れる、妬婦《ねたみおんな》め、われは、先ず何処《いずこ》のものじゃ。
お沢 (もの言わず。)
神職 人の娘か。
お沢 (わずかに頭《かぶり》ふる。)
神職 人妻《ひとづま》か。
禰宜 人妻にしては、艶々《つやつや》と所帯気《しょたいげ》が一向《いっこう》に見えぬな。また所帯せぬほどの身柄《みがら》とも見えぬ。妾《めかけ》、てかけ、囲《かこい》ものか、これ、霊験《あらたか》な神の御前《みまえ》じゃ、明かに申せ。
お沢 はい、何も申しませぬ、ただ(きれぎれにいう)お恥《はずか》しう存じます。
神職 おのれが恥を知る奴か。――本妻正室と言わばまた聞こえる。人のもてあそびの腐れ爛《ただ》れ汚《よご》れものが、かけまくも畏《かしこ》き……清く
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