多神教
泉鏡花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)美濃《みの》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一連皆|素朴《そぼく》な

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「魚+會」、第4水準2−93−83]《なます》も
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場所  美濃《みの》、三河《みかわ》の国境。山中の社《やしろ》――奥の院。
名   白寮権現《はくりょうごんげん》、媛神《ひめがみ》。(はたち余に見ゆ)神職。(榛貞臣《はしばみさだおみ》。修験《しゅげん》の出)禰宜《ねぎ》。(布気田《ふげた》五郎次)老いたる禰宜。雑役の仕丁《しちょう》。(棚村《たなむら》久内)二十五座の太鼓の男。〆太鼓《しめだいこ》の男。笛の男。おかめの面の男。道化の面の男。般若《はんにゃ》の面の男。後見一人。お沢。(或男の妾《めかけ》、二十五、六)天狗《てんぐ》。(丁々坊《ちょうちょうぼう》)巫女《みこ》。(五十ばかり)道成寺《どうじょうじ》の白拍子《しらびょうし》に扮《ふん》したる俳優《やくしゃ》。一ツ目小僧の童男童女。村の児《こ》五、六人。
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禰宜 (略装にて)いや、これこれ(中啓《ちゅうけい》を挙《あ》げて、二十五座の一連《いちれん》に呼掛《よびか》く)大分《だいぶ》日もかげって参った。いずれも一休みさっしゃるが可《よ》いぞ。
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この言葉のうち、神楽《かぐら》の面々、踊《おどり》の手を休《や》め、従って囃子《はやし》静まる。一連皆|素朴《そぼく》なる山家人《やまがびと》、装束《しょうぞく》をつけず、面《めん》のみなり。――落葉散りしき、尾花《おばな》むら生《お》いたる中に、道化《どうけ》の面、おかめ、般若《はんにゃ》など、居《い》ならび、立添《たちそ》い、意味なき身ぶりをしたるを留《とど》む。おのおのその面をはずす、年は三十より四十ばかり。後見《こうけん》最も年配なり。
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後見 こりゃ、へい、……神《かん》ぬし様。
道化の面の男 お喧《やかま》しいこ
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