と、蚊帳越の障子のようでもあり、廊下の雨戸のようでもあり、次の間と隔ての襖際《ふすまぎわ》……また柱の根かとも思われて、カタカタ、カタカタと響く――あの茶立虫《ちゃたてむし》とも聞えれば、壁の中で蝙蝠《こうもり》が鳴くようでもあるし、縁の下で、蟇《ひきがえる》が、コトコトと云うとも考えられる。それが貴僧《あなた》、気の持ちようで、ココ、ココ、ココヨとも、ココト、とも云うようなんです。
自分のだけに、手を繃帯《ほうたい》した水兵の方が、一番に蚊帳を出ました。
返す気で、在所《ありか》をおっしゃるからは仔細《しさい》はない、と坊さんがまた這出《はいだ》して、畳に擦附けるように、耳を澄ます。と水兵の方は、真中《まんなか》で耳を傾けて、腕組をして立ってなすったっけ。見当がついたと見えて、目で知らせ合って、上下《うえした》で頷《うなず》いて、その、貴僧《あなた》の背後《うしろ》になってます、」
「え!」
と肩越に淵《ふち》を差覗《さしのぞ》くがごとく、座をずらして見返りながら、
「成程。」
「北へ四枚目の隅の障子を開けますとね。溝へ柄を、その柱へ、切尖《きっさき》を立掛けてあったろうではあ
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