《せがれ》やら、小女童《こめろ》やら分りませぬ。
 おなじように、憑物《つきもの》がして、魔に使われているようで、手もつけられず、親たちがうろうろしますの。村方一同寄ると障《さわ》ると、立膝に腕組するやら、平胡坐《ひらあぐら》で頬杖《ほおづえ》つくやら、変じゃ、希有《けう》じゃ、何でもただ事であるまい、と薄気味を悪がります。
 中でも、ほッと溜息《ためいき》ついて、気に掛けさっしゃったのが、鶴谷喜十郎様。」
 と丁寧に、また名告《なの》って、姥《うば》は四辺《あたり》を見たのである。

       十三

 さて十年の馴染《なじみ》のように、擦寄って声を密《ひそ》め、
「童唄《わらべうた》を聞かっしゃりまし――(秋谷|邸《やしき》の細道じゃ、誰方が見えても通しません)――と、の、それ、」
 小次郎法師の頷《うなず》くのを、合点させたり、と熟《じっ》と見て、姥《うば》はやがて打頷《うちうなず》き、
「……でござりましょう。まず、この秋谷で、邸と申しますれば――そりゃ土蔵、白壁造《しらかべづくり》、瓦《かわら》屋根は、御方一軒ではござりませぬが、太閤様《たいこうさま》は秀吉公、黄門様は水
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