狂ったのも安心して治りますが、免《のが》れられぬ因縁で、その令室《おくがた》の夫というが、旅行《たび》さきの海から帰って、その風聞を耳にしますと――これが世にも恐ろしい、嫉妬深い男でござんす。――
 その変化沙汰《へんげざた》のある間、そこに籠《こも》った、という旅の少年。……
 この明さんと、御自分の令室《おくがた》が、てっきり不義に極《きわま》った、と最早その時は言訳立たず。鶴谷の本宅から買い受けて、そしてこの空邸へ、その令室をとじ籠《こ》めましょう。
 貴僧《あなた》。
 その美しい令室《おくがた》が、人に羞《は》じ、世に恥じて、一室処《ひとまどころ》を閉切《とじき》って、自分を暗夜《やみ》に封じ籠めます。
 そして、日が経《た》つに従うて、見もせず聞きもせぬけれど、浮名《うきな》が立って濡衣《ぬれぎぬ》着た、その明さんが何となく、慕わしく、懐かしく、果《はて》は恋しく、憧憬《あこが》れる。切ない思い、激しい恋は、今、私の心、また明さんの、毬唄聞こうと狂うばかりの、その思《おもい》と同一《おなじ》事。
 一歳《ひととせ》か、二歳《ふたとせ》か、三歳《みとせ》の後か、明さんは、また
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