へ置直そうと四辺《あたり》を視《み》た時、蚊帳の中で、三声《みこえ》ばかり、太《いた》く明が魘《うな》された。が……此方《こなた》の胸が痛んだばかりで、揺起すまでもなく、幸《さいわい》にまた静《しずか》になった。
障子を開けて、縁側は自分も通るし、一方は庭づたいに入った口で、日頃はとにかく、別に今夜は何事もない。頻《しきり》に気になるのは、大掃除の時のために、一枚はずれる仕掛けだという、向うの天井の隅と、その下に開けた事のない隔ての襖《ふすま》の合せ目である。
「わが仏守らせたまえ。」
と祈念なし、机を取って、押戴《おしいただ》いて、屹《きっ》と見て、其方《そなた》へ、と座を立とうとする。
途端であった。
「しばらく。」
ずしん、地《じ》の底へ響く声がした。
明が呼んだか、と思う蚊帳の中《うち》で、また烈《はげ》しく魘《うな》されるので、呼吸《いき》を詰めて、
「…………」
色を変える。
襖の陰で、
「客僧しばらく――唯今《ただいま》それへ参るものがござる。往来を塞《ふさ》ぐまい。押して通るは自在じゃが、仏像ゆえに遠慮をいたす。いや、御身《おみ》に向うて、害を加うる仔細
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