を出して、鳩尾《みぞおち》へ踏落しているのを、痩《や》せた胸に障《さわ》らないように、密《そ》っと引掛《ひっか》けたが何にも知らず、まず可《よ》かった。――仁右衛門が見た御新姐《ごしんぞ》のように、この手が触って血を吐きながら、莞爾《にっこり》としたらどうしょう。
 そう思うと寝苦しい、何にも見まい、と目を塞《ふさ》ぐ、と塞ぐ後から、睫《まぶた》がぱちぱちと音がしそうに開いてしまうのは、心が冴《さ》えて寝られぬのである。
 掻巻《かいまき》を引被《ひっかぶ》れば、衾《ふすま》の袖から襟かけて、大《おおき》な洞穴《ほらあな》のように覚えて、足を曳《ひ》いて、何やらずるずると引入れそうで不安に堪えぬ。
 すぽりと脱いで、坊主|天窓《あたま》をぬいと出したが、これはまた、ばあ、と云ってニタリと笑いそうで、自分の顔ながら気味の悪さ。
 そこで屹《きっ》となって、襟を合せて、枕を仕かえて、気を沈めて、
「衆怨悉退散《しゅうおんしったいさん》、」
 と仰向《あおむ》けのまま呪《じゅ》すと、いくらか心が静まったと見えて、旅僧はつい、うとうととしたかと思うと、ぽたり、と何か枕許《まくらもと》へ来たのが
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