音《あしおと》を忍びたそうに、腰を浮かせて、同一《おなじ》処を蹌踉蹌踉《うろうろ》する。

       三十五

「そうふらふらさしちゃ燈《あかり》が消えます。貸しなさい、私がその手燭《てしょく》を持とうで。」
「頼んます、はい、どうぞお前様《めえさま》持たっせえて、ついでにその法衣《ころも》着さっせえ姿から、光明|赫燿《かくやく》と願えてえだ。」
 僧は燭を取って一足出たが、
「お爺さん、」
 と呼んだのが、驚破《すわや》事ありげに聞えたので、手んぼうならぬ手を引込《ひっこ》め、不具《かたわ》の方と同一《おなじ》処で、掌《てのひら》をあけながら、据腰《すえごし》で顔を見上げる、と皺面《しわづら》ばかりが燭の影に真赤《まっか》になった。――この赤親仁と、青坊主が、廊下はずれに物言う状《さま》は、鬼が囁《ささや》くに異ならず。
「ええ、」
「どこか呻吟《うめ》くような声がするよ。」
「芸もねえ、威《おど》かしてどうさっせる。」
「聞きなさい、それ……」
「う、う、う、」
 と厭《いや》な声。
「爺さん、お前が呻吟くのかい。」
「いんね、」
 と変な顔色で、鼻をしかめ、
「ふん、難産の呻
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