く》になりますが。」

       三十一

「故郷では、未婚の女が、丑年の丑の日に、衣《きもの》を清め、身を清め……」
 唾《つば》をのんで聞いた客僧が、
「成程、」
 と腕組みして、
「精進潔斎。」
「そんな大した、」
 と言消したが、また打頷《うちうなず》き
「どうせ娘の子のする事です。そうまでも行《ゆ》きますまいが、髪を洗って、湯に入って、そしてその洗髪《あらいがみ》を櫛巻《くしま》きに結んで、笄《こうがい》なしに、紅《べに》ばかり薄くつけるのだそうです。
 それから、十畳敷を閉込《しめこ》んで、床の間をうしろに、どこか、壁へ向いて、そこへ婦《おんな》の魂を据える、鏡です。
 丑童子《うしどうじ》、斑《まだら》の御神《おんかみ》、と、一心に念じて、傍目《わきめ》も触《ふ》らないで、瞻《みつ》めていると、その丑の年丑の月丑の日の……丑時《うしどき》になると、その鏡に、……前世から定まった縁の人の姿が見える、という伝説があります。
 娘は、誰も勝手を知らない、その家で、その丑待《うしまち》を独《ひとり》でして、何かに誘われてふらふらと出たんですって。……それっきりになっているんで
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