、何事もありません、茄子《なすび》の鳴くわけは無いのですから。
それでも爺さんは苦切《にがりき》って、少《わか》い時にゃ、随分|悪物食《あくものぐい》をしたものだで、葬い料で酒ェ買って、犬の死骸《しがい》なら今でも食うが、茄子《なす》の鳴くのは厭だ、と言います。
もっとも変なことは変ですが、同じ気味の悪い中でも、対手《あいて》が茄子だけに、こりゃおかしくって可《よ》かったですよ。」
「茄子《なすび》ならば、でございますが、ものは茄子《なす》でも、対手《あいて》は別にございましょう。」
明は俯向《うつむ》いて莞爾《にっこり》した、別に意味のない笑《わらい》だった。
「で、そりゃ昼間の事でございますな。」
「昨日の午後《ひるすぎ》でした。」
「昼間からは容易でない。」
と半ば呟《つぶや》くがごとくに云って、
「では、昨夜あたりはさぞ……」
と聞く方が眉を顰《ひそ》める。
「ええ、酷《ひど》うございました、どうせ、夜が寝られはしないんですから、」
「それでお窶《やつ》れなさるのじゃ、貴下《あなた》、お顔の色がとんだ悪い!……
茶店の婆さんが申したも、その事でございます。
唯今《
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