を辷《すべ》り落ちて、消えたは可《い》いが、ぽたりぽたり雫《しずく》がし出した。頸《えり》と言わず、肩と言わず、降りかかって来ましたが、手を当てる、とべとりとして粘る。嗅《か》いでみると、いや、貴僧《あなた》、悪甘い匂と言ったら。
夜深しに汗ばんで、蒸々《むしむし》して、咽喉《のど》の乾いた処へ、その匂い。血腥《ちなまぐさ》いより堪《たま》りかねて、縁側を開けて、私が一番に庭へ出ると、皆《みんな》も跣足《はだし》で飛下りた。
驚いたのは、もう夜が明けていたことです。山の巓《いただき》の方は蒼《あお》くなって、麓《ふもと》へ靄《もや》が白んでいました。
不思議な処へ、思いがけない景色を見て、和蘭陀《オランダ》へ流された、と云うのがあるし、堪らない、まず行燈《あんどう》をつけ直せ、と怒鳴ったのが居る。
屋根のその辺だ、と思う、西瓜のあとには、烏が居て、コトコトと嘴《はし》を鳴らし、短夜《みじかよ》の明けた広縁には、ぞろぞろ夥《おびただ》しい、褐《かば》色の黒いのと、松虫鈴虫のようなのが、うようよして、ざっと障子へ駆上《かけあが》って消えましたが、西瓜の核《たね》が化《な》ったんですって。
連中は、ふらふら[#「ふらふら」は底本では「ふろふら」]と二日酔いのような工合《ぐあい》で、ぼんやり黒門を出て、川べりに帰りました。
橋の処で、杭《くい》にかかって、ぶかぶか浮いた真蒼《まっさお》な西瓜を見て、それから夢中で、遁《に》げたそうです。
昼過ぎに、宰八が来て、その話。
私はその時分までぐっすり寝ました。
この時おかしかったのは、爺さんが、目覚しに茶を一つ入れてやるべいって、小まめに世話をして、佳《い》い色に煮花が出来ましたが、あいにく西瓜も盗んで来ない。何かないか、と考えて、有る――台所に糖味噌が、こりゃ私に、と云って一々運ぶも面倒だから、と手の着いたのじゃあるが、桶《おけ》ごと持って来て、時々爺さんが何かを突込《つッこ》んでおいてくれるんでした。
一人だから食べ切れないで、直《じ》きつき過ぎる、と云って、世話もなし、茄子《なす》を蔕《へた》ごと生《しょう》のもので漬けてありました。可《い》い漬《つか》り加減だろう、とそれに気が着いて、台所へ出ましたっけ。
(お客様あ、)
(何だい。)
(昨夜《ゆうべ》凄《すさま》じい音がしたと言わしっけね、何にも落《お
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