どの枝《えだ》を透《す》かして靡《なび》きました。
私《わたし》の居《ゐ》た、草《くさ》にも、しつとりと其《そ》の靄《もや》が這《は》ふやうでしたが、袖《そで》には掛《かゝ》らず、肩《かた》にも卷《ま》かず、目《め》なんぞは水晶《すゐしやう》を透《とほ》して見《み》るやうに透明《とうめい》で。詰《つま》り、上下《うへした》が白《しろ》く曇《くも》つて、五六|尺《しやく》水《みづ》の上《うへ》が、却《かへ》つて透通《すきとほ》る程《ほど》なので……
あゝ、あの柳《やなぎ》に、美《うつくし》い虹《にじ》が渡《わた》る、と見《み》ると、薄靄《うすもや》に、中《なか》が分《わか》れて、三《みつ》つに切《き》れて、友染《いうぜん》に、鹿《か》の子《こ》絞《しぼり》の菖蒲《あやめ》を被《か》けた、派手《はで》に涼《すゞ》しい裝《よそほひ》の婦《をんな》が三|人《にん》。
白《しろ》い手《て》が、ちら/\と動《うご》いた、と思《おも》ふと、鉛《なまり》を曳《ひ》いた絲《いと》が三條《みすぢ》、三處《みところ》へ棹《さを》が下《お》りた。
(あゝ、鯉《こひ》が居《ゐ》る……)
一|尺《しやく》
前へ
次へ
全38ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング