にも、前《まへ》から定《さだ》まる運《うん》があつて、花《はな》ならば、花《はな》、蝶《てふ》ならば、蝶《てふ》、雲《くも》ならば、雲《くも》に、美《うつく》しくも凄《すご》くも寂《さび》しうも彩色《さいしき》されて描《か》いてある…手《て》を取合《とりあ》ふて睦《むつ》み合《あ》ふて、もの言《い》つて、二人《ふたり》居《ゐ》られる身《み》ではない。
 唯《たゞ》形《かたち》ばかり、何時《いつ》何処《いづく》でも、貴方《あなた》が思《おも》ふ時《とき》、其処《そこ》に居《ゐ》る、念《ねん》ずる時《とき》直《す》ぐに逢《あ》へます、お呼《よ》び遊《あそ》ばせば参《まゐ》られます。
 早《は》や、小刀《こがたな》を……、小刀《こがたな》を……、」
「帰命頂礼《きみやうてうらい》、南無不可思議《なむふかしぎ》、帰命頂礼《きみやうてうらい》、南無不可思議《なむふかしぎ》。」
と唱《とな》へながら、老爺《ぢい》が拾《ひろ》つて渡《わた》した時《とき》、雪枝《ゆきえ》は犇《ひし》と小刀《こがたな》を取《と》つた。
「一刀一拝《いつたういつぱい》、拝《をが》め、頼《たの》め、念《ねん》じて、念《ねん
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