ものが、恋《こひ》をした咎《とがめ》を受《う》けて、其《そ》の時《とき》から、唯《たゞ》一人《ひとり》で、今《いま》までも双六巌《すごろくいは》の番《ばん》をして、雨露《あめつゆ》に打《う》たれても、……貴下《あなた》の事《こと》が忘《わす》れられぬ。
其《そ》の心《こゝろ》が通《つう》ずるのか、貴下《あなた》も年月《としつき》経《た》ち、日《ひ》が経《た》つても、私《わたし》の事《こと》をお忘《わす》れなさらず、昨日《きのふ》までも一昨日《おとゝひ》までも、思《おも》ひ詰《つ》めて居《ゐ》て下《くだ》さいましたが、奥様《おくさま》が出来《でき》たので、つひ余所事《よそごと》になさいました。
それをお怨《うら》み申《まを》すのではない。嫉妬《ねたみ》も猜《そね》みもせぬけれど、……口惜《くちをし》い、其《それ》がために、敵《かたき》から仕事《しごと》の恥辱《ちじよく》をお受《う》け遊《あそ》ばす。……雲《くも》、花片《はなびら》の数《かず》を算《よ》めば、思《おも》ふまゝの乞目《こひめ》が出《で》て、双六《すごろく》に勝《か》てたのに、……唯《たゞ》一刻《いつこく》を争《あらそ》ふ
前へ
次へ
全284ページ中272ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング