、背《せ》に頸《くび》にかゝつたまゝ、美女《たをやめ》は、手《て》を額《ひたひ》に当《あ》てゝ、双六盤《すごろくばん》に差俯向《さしうつむ》いて、ものゝ悩《なや》ましげな風情《ふぜい》であつた。
「お姫様《ひめさま》、」
と風《かぜ》に曲《ゆが》んだ烏帽子《えばうし》の紐《ひも》を結直《ゆひなお》したが、老爺《ぢい》の声《こゑ》も力《ちから》が無《な》かつた。
「姫様《ひいさま》。」
と膝行《いざ》り寄《よ》つて、……雪枝《ゆきえ》が伸上《のびあが》るやうに膝《ひざ》を支《つ》いて、其《そ》の袖《そで》のあたりを拝《をが》んだ。
「頼《たの》まれたのに、済《す》みません。」
二筋《ふたすぢ》三筋《みすぢ》、後毛《をくれげ》のふりかゝる顔《かほ》を上《あ》げて、青年《わかもの》の顔《かほ》を凝《じつ》と視《なが》めて、睫毛《まつげ》の蔭《かげ》に花《はな》の雫《しづく》、衝《つ》と光《ひか》つて、はら/\と玉《たま》の涙《なみだ》を落《おと》す。
老爺《ぢい》も鼻《はな》を詰《つま》らせた。
雪枝《ゆきえ》は身《み》を絞《しぼ》つて湧出《わきいづ》るやうに、熱《あつ》い、柔《やはら
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