剰銭《つりせん》を取《と》る年《とし》で、城《じやう》ヶ|沼《ぬま》の女《をんな》の影《かげ》に憂身《うきみ》を窶《やつ》すお庇《かげ》には、動《うご》く、働《はたら》く、彫刻物《ほりもの》は活《い》きて歩行《ある》く……独《ひと》りですら/\と天守《てんしゆ》へ上《あが》つて、魔物《まもの》の閨《ねや》に推参《すゐさん》する、が、張《はり》も意地《いぢ》も着《つ》いて居《を》るぞ、其《そ》の時《とき》嫌《きら》はれぬ用心《ようじん》さつせえ、と御坊《ごばう》に言托《ことづけ》を頼《たの》まうかい。』
『可《よ》い、可《よ》い。』
ニヤ/\と両《りやう》の頬《ほゝ》を暗《くら》くして、あの三日月形《みかづきなり》の大口《おほぐち》を、食反《くひそ》らして結《むす》んだまゝ、口元《くちもと》をひく/\と舌《した》の赤《あか》う飜《かへ》るまで、蠢《うご》めかせた笑《わら》ひ方《かた》で、
『面白《おもしろ》い! 旅《たび》のものぢやが、其《それ》も聞《き》いた。此方《こなた》が手遊《てあそ》びに拵《こしら》える、五位鷺《ごゐさぎ》の船頭《せんどう》は、翼《つばさ》で舵取《かぢと》り、嘴
前へ
次へ
全284ページ中239ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング