《こと》は手廻《てまは》しに用済《ようず》みと成《な》つたでな、翌朝《あけのあさ》直《すぐ》にも、此処《こゝ》を出発《しゆつぱつ》と思《おも》ふたが、何《なに》か気《き》に成《な》る……温泉宿《おんせんやど》、村里《むらざと》を托鉢《たくはつ》して、何《なに》となく、ふら/\と日《ひ》を送《おく》つた。其《そ》の様子《やうす》を聞《き》けば、私《わし》が言托《ことづけ》を為《し》た通《とほ》り、何《なに》か、内儀《ないぎ》の形代《かたしろ》を一心《いつしん》に刻《きざ》むと聞《き》く、……其《それ》が成就《じやうじゆ》したと言《い》ふ昨夜《ゆふべ》ぢや。少《わか》い人《ひと》が人形《にんぎやう》を運《はこ》んで行《ゆ》く後《あと》になり前《さき》になり、天守《てんしゆ》へ入《はい》つて四階目《しかいめ》へ上《のぼ》つた、処《ところ》、柱《はしら》の根《ね》に其《そ》の木像《もくざう》を抱緊《だきし》めて、死《し》んだやうに眠《ねむ》つて居《を》る。
はてな、内儀《ないぎ》を未《ま》だ返《かへ》さぬか、一体《いつたい》どんな魔物《まもの》が棲《す》むぞ。――其処《そこ》へ行《ゆ》くまで
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