れ》は相応《ふさ》はぬ。イワナが化《ば》けて坊主《ばうず》になつて、殺生禁断《せつしやうきんだん》の説教《せつけう》に念仏《ねんぶつ》唱《とな》へて辿《たど》りさうな。……
 処《ところ》を、歩行《ある》く途中《とちゆう》、人一人《ひとひとり》にも逢《あ》はなんだ、が逢《あ》へば婦《をんな》でも山猫《やまねこ》でも、皆《みな》坊主《ばうず》の姿《すがた》に見《み》えやうと思《おも》つた。
 こん/\と狐《きつね》が啼《な》いた。……犬《いぬ》の声《こゑ》ではない。唯《と》ある松《まつ》の樹《き》の蔭《かげ》で、つひ通《とほ》りかゝつた足許《あしもと》で。
 こん/\こん/\と啼《な》くのに、フト耳《みゝ》を傾《かたむ》けて、虫《むし》を聞《き》くが如《ごと》く立停《たちどま》ると、何《なに》かものを言《い》ふやうで、
『コンクワイ、クワイ、来《こ》ぬかい、来《こ》ぬかい。』と恁《か》う啼《な》く。
『来《こ》ぬかい、来《こ》ぬかい、来《こ》ぬかい、案山子《かゝし》、来《こ》ぬかい案山子《かゝし》、』と又《また》聞《きこ》える。
 聞《き》く中《うち》に、畝《あぜ》の蔭《かげ》から、ひよ
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