沼《ぬま》を裏返《うらがへ》して、空《そら》へ漲《みなぎ》らした夜《よる》の色《いろ》――寝《ね》をびれて戸惑《とまど》ひをしたやうな肥《ふと》つた月《つき》が、田《た》の水《みづ》にも映《うつ》らず、山《やま》の姿《すがた》も照《て》らさず……然《さ》うかと言《い》つて並木《なみき》の松《まつ》に隠《かく》れもせず、谷《たに》の底《そこ》にも落《お》ちないで、ふわりと便《たより》のない処《ところ》に、土器色《かはらけいろ》して、畷《なはて》も畝《あぜ》も茫《ばう》と明《あかる》いのに、粘《ねば》つた、生暖《なまぬる》い小糠雨《こぬかあめ》が、月《つき》の上《うへ》からともなく、下《した》からともなく、しつとりと来《き》て、むら/\と途中《とちゆう》で消《き》える……と髪《かみ》も衣《きもの》も濡《ぬ》れもしないで、湿《しめつ》ぽい。が、手《て》で撫《な》でゝ見《み》ても雫《しづく》は分《わか》らぬ。――雨《あめ》が降《ふ》るのではない、月《つき》が欠伸《あくび》する息《いき》がかゝるのであらう……そんな晩《ばん》には獺《かはをそ》が化《ば》けると言《い》ふが、山国《やまぐに》に其《そ
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