より、一圓《いちゑん》の高臺《たかだい》なれども、射《い》る日《ひ》の光《ひかり》薄《うす》ければ小雨《こさめ》のあとも路《みち》は乾《かわ》かず。此《こ》の奧《おく》に住《す》める人《ひと》の使《つか》へる婢《をんな》、やつちや場《ば》に青物《あをもの》買《か》ひに出《い》づるに、いつも高足駄《たかあしだ》穿《は》きて、なほ爪先《つまさき》を汚《よご》すぬかるみの、特《こと》に水溜《みづたまり》には、蛭《ひる》も泳《およ》ぐらんと氣味惡《きみわる》きに、唯《たゞ》一重《ひとへ》森《もり》を出《い》づれば、吹通《ふきとほ》しの風《かぜ》砂《すな》を捲《ま》きて、雪駄《せつた》ちやら/\と人《ひと》の通《とほ》る、此方《こなた》は裾端折《すそはしをり》の然《しか》も穿物《はきもの》の泥《どろ》、二《に》の字《じ》ならぬ奧山住《おくやまずみ》の足痕《あしあと》を、白晝《はくちう》に印《いん》するが極《きまり》惡《わる》しなど歎《かこ》つ。
嘗《かつ》て雨《あめ》のふる夜《よ》、其《そ》の人《ひと》の家《いへ》より辭《じ》して我家《わがや》に歸《かへ》ることありしに、固《もと》より親《おや
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