一条の路が開けました。――雪の渦が十オばかりぐるぐると続いて行《ゆ》く。……
これを反対にすると、虎杖の方へ行《ゆ》くのであります。
犬のその進む方は、まるで違った道でありました。が、私は夢中で、そのあとに続いたのであります。
路は一面、渺々《びょうびょう》と白い野原になりました。
が、大犬の勢《いきおい》は衰えません。――勿論、行《ゆ》くあとに行くあとに道が開けます。渦が続いて行く……
野の中空を、雪の翼を縫って、あの青い火が、蜿々《うねうね》と蛍のように飛んで来ました。
真正面《まっしょうめん》に、凹字形《おうじけい》の大《おおき》な建ものが、真白《まっしろ》な大軍艦のように朦朧《もうろう》として顕《あらわ》れました。と見ると、怪し火は、何と、ツツツと尾を曳《ひ》きつつ、先へ斜《ななめ》に飛んで、その大屋根の高い棟なる避雷針の尖端《とったん》に、ぱっと留って、ちらちらと青く輝きます。
ウオオオオオ
鉄づくりの門の柱の、やがて平地と同じに埋《うず》まった真中《まんなか》を、犬は山を乗るように入ります。私は坂を越すように続きました。
ドンと鳴って、犬の頭突《ずつ》きに
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