一条の路が開けました。――雪の渦が十オばかりぐるぐると続いて行《ゆ》く。……
 これを反対にすると、虎杖の方へ行《ゆ》くのであります。
 犬のその進む方は、まるで違った道でありました。が、私は夢中で、そのあとに続いたのであります。
 路は一面、渺々《びょうびょう》と白い野原になりました。
 が、大犬の勢《いきおい》は衰えません。――勿論、行《ゆ》くあとに行くあとに道が開けます。渦が続いて行く……
 野の中空を、雪の翼を縫って、あの青い火が、蜿々《うねうね》と蛍のように飛んで来ました。
 真正面《まっしょうめん》に、凹字形《おうじけい》の大《おおき》な建ものが、真白《まっしろ》な大軍艦のように朦朧《もうろう》として顕《あらわ》れました。と見ると、怪し火は、何と、ツツツと尾を曳《ひ》きつつ、先へ斜《ななめ》に飛んで、その大屋根の高い棟なる避雷針の尖端《とったん》に、ぱっと留って、ちらちらと青く輝きます。
 ウオオオオオ
 鉄づくりの門の柱の、やがて平地と同じに埋《うず》まった真中《まんなか》を、犬は山を乗るように入ります。私は坂を越すように続きました。
 ドンと鳴って、犬の頭突《ずつ》きに
前へ 次へ
全17ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング