の絶《た》える。大雪《おほゆき》の夜《よ》。」
お米《よね》さんが、あの虎杖《いたどり》の里《さと》の、此《こ》の吹雪《ふゞき》に……
「……唯《たゞ》一人《ひとり》。」――
私《わたし》は決然《けつぜん》として、身《み》ごしらへをしたのであります。
「電報《でんぱう》を――」
と言《い》つて、旅宿《りよしゆく》を出《で》ました。
實《じつ》はなくなりました父《ちゝ》が、其《そ》の危篤《きとく》の時《とき》、東京《とうきやう》から歸《かへ》りますのに、(タダイマココマデキマシタ)と此《こ》の町《まち》から發信《はつしん》した……偶《ふ》とそれを口實《こうじつ》に――時間《じかん》は遲《おそ》くはありませんが、目口《めくち》もあかない、此《こ》の吹雪《ふゞき》に、何《なん》と言《い》つて外《そと》へ出《で》ようと、放火《つけび》か強盜《がうたう》、人殺《ひとごろし》に疑《うたが》はれはしまいかと危《あやぶ》むまでに、さんざん思《おも》ひ惑《まど》つたあとです。
ころ柿《がき》のやうな髮《かみ》を結《ゆ》つた霜《しも》げた女中《ぢよちう》が、雜炊《ざふすゐ》でもするのでせう――土
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