ます。
 あと、ものの一町《いつちやう》ばかりは、眞白《まつしろ》な一條《いちでう》の路《みち》が開《ひら》けました。――雪《ゆき》の渦《うづ》が十《と》ヲばかりぐる/\と續《つゞ》いて行《ゆ》く。……
 此《これ》を反對《はんたい》にすると、虎杖《いたどり》の方《はう》へ行《ゆ》くのであります。
 犬《いぬ》の其《そ》の進《すゝ》む方《はう》は、まるで違《ちが》つた道《みち》でありました。が、私《わたし》は夢中《むちう》で、其《そ》のあとに續《つゞ》いたのであります。
 路《みち》は一面《いちめん》、渺々《べう/\》と白《しろ》い野原《のはら》に成《な》りました。
 が、大犬《おほいぬ》の勢《いきほひ》は衰《おとろ》へません。――勿論《もちろん》、行《ゆ》くあとに/\道《みち》が開《ひら》けます。渦《うづ》が續《つゞ》いて行《ゆ》く……
 野《の》の中空《なかぞら》を、雪《ゆき》の翼《つばさ》を縫《ぬ》つて、あの青《あを》い火《ひ》が、蜿々《うね/\》と螢《ほたる》のやうに飛《と》んで來《き》ました。
 眞正面《まつしやうめん》に、凹字形《あふじけい》の大《おほき》な建《たて》ものが
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