《うづ》が、風《かぜ》で、ぐわうと卷《ま》いて、捲《ま》きながら亂《みだ》るゝと見《み》れば、計知《はかりし》られぬ高《たか》さから颯《さつ》と大瀧《おほだき》を搖落《ゆりおと》すやうに、泡沫《あわ》とも、しぶきとも、粉《こな》とも、灰《はひ》とも、針《はり》とも分《わ》かず、降埋《ふりうづ》める。
「あつ。」
私《わたし》は又《また》倒《たふ》れました。
怪火《あやしび》に映《うつ》る、其《そ》の大瀧《おほだき》の雪《ゆき》は、目《め》の前《まへ》なる、ヅツンと重《おも》い、大《おほき》な山《やま》の頂《いたゞき》から一雪崩《ひとなだ》れに落《お》ちて來《く》るやうにも見《み》えました。
引挫《ひつし》がれた。
苦痛《くつう》の顏《かほ》の、醜《みにく》さを隱《かく》さうと、裏《うら》も表《おもて》も同《おな》じ雪《ゆき》の、厚《あつ》く、重《おも》い、外套《ぐわいたう》の袖《そで》を被《かぶ》ると、また青《あを》い火《ひ》の影《かげ》に、紫陽花《あぢさゐ》の花《はな》に包《つゝ》まれますやうで、且《か》つ白羽二重《しろはぶたへ》の裏《うら》に薄萌黄《うすもえぎ》がすツと透《
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