\と輪《わ》を卷《ま》いて、一條《ひとすぢ》、ゆつたりと尾《を》を下《した》に垂《た》れたやうな形《かたち》のものが、降《ふ》りしきり、吹煽《ふきあふ》つて空中《くうちう》に薄黒《うすぐろ》い列《れつ》を造《つく》ります。
見《み》て居《ゐ》るうちに、其《そ》の一《ひと》つが、ぱつと消《き》えるかと思《おも》ふと、忽《たちま》ち、ぽつと、續《つゞ》いて同《おな》じ形《かたち》が顯《あらは》れます。消《き》えるのではない、幽《かすか》に見《み》える若狹《わかさ》の岬《みさき》へ矢《や》の如《ごと》く白《しろ》く成《な》つて飛《と》ぶのです。一《ひと》つ一《ひと》つが皆《み》な然《さ》うでした。――吹雪《ふゞき》の渦《うづ》は湧《わ》いては飛《と》び、湧《わ》いては飛《と》びます。
私《わたし》の耳《みゝ》を打《う》ち、鼻《はな》を捩《ね》ぢつゝ、いま、其《そ》の渦《うづ》が乘《の》つては飛《と》び、掠《かす》めては走《はし》るんです。
大波《おほなみ》に漂《たゞよ》ふ小舟《こぶね》は、宙天《ちうてん》に搖上《ゆすりあげ》らるゝ時《とき》は、唯《たゞ》波《なみ》ばかり、白《しろ》き黒
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