き》のために進行《しんかう》が續《つゞ》けられなくなつて、晩方《ばんがた》武生驛《たけふえき》(越前《ゑちぜん》)へ留《とま》つたのです。強《し》ひて一町場《ひとちやうば》ぐらゐは前進《ぜんしん》出來《でき》ない事《こと》はない。が、然《さ》うすると、深山《しんざん》の小驛《せうえき》ですから、旅舍《りよしや》にも食料《しよくれう》にも、乘客《じようかく》に對《たい》する設備《せつび》が不足《ふそく》で、危險《きけん》であるからとの事《こと》でありました。
 元來《ぐわんらい》――歸途《きと》に此《こ》の線《せん》をたよつて東海道《とうかいだう》へ大※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《おほまは》りをしようとしたのは、……實《じつ》は途中《とちう》で決心《けつしん》が出來《でき》たら、武生《たけふ》へ降《お》りて許《ゆる》されない事《こと》ながら、そこから虎杖《いたどり》の里《さと》に、もとの蔦屋《つたや》(旅館《りよくわん》)のお米《よね》さんを訪《たづ》ねようと言《い》ふ……見《み》る/\積《つも》る雪《ゆき》の中《なか》に、淡雪《あはゆき》の消《き》えるやうな、あだなのぞみ
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