休《やす》んでと、深切《しんせつ》にほだされて、懷《なつか》しさうに民子《たみこ》がいふのを、いゝえ、さうしては居《を》られませぬ、お荷物《にもつ》は此處《こゝ》へ、もし御遠慮《ごゑんりよ》はござりませぬ、足《あし》を投出《なげだ》して、裾《すそ》の方《はう》からお温《ぬくも》りなされませ、忘《わす》れても無理《むり》な路《みち》はなされますな。それぢやとつさん頼《たの》んだぜ、婆《ばあ》さん、いたはつて上《あ》げてくんなせい。
 富藏《とみざう》さんとやら、といつて、民子《たみこ》は思《おも》はず涙《なみだ》ぐむ。
 へい、奧《おく》さま御機嫌《ごきげん》よう、へい、又《また》通《とほ》りがかりにも、お供《とも》の御病人《ごびやうにん》に氣《き》をつけます。あゝ、いかい難儀《なんぎ》をして、おいでなさるさきの旦那樣《だんなさま》も御大病《ごたいびやう》さうな、唯《たゞ》の時《とき》なら橋《はし》の上《うへ》も、欄干《らんかん》の方《はう》は避《よ》けてお通《とほ》りなさらうのに、おいたはしい。お天道樣《てんたうさま》、何分《なにぶん》お頼《たの》み申《まを》しますぜ、やあお天道樣《て
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