からだ》にこそ。
口々《くち/″\》に押宥《おしなだ》め、民子《たみこ》も切《せつ》に慰《なぐさ》めて、お前《まへ》の病氣《びやうき》を看護《みと》ると謂《い》つて此處《こゝ》に足《あし》は留《と》められぬ。棄《す》てゝ行《ゆ》くには忍《しの》びぬけれども、鎭守府《ちんじゆふ》の旦那樣《だんなさま》が、呼吸《いき》のある内《うち》一目《ひとめ》逢《あ》ひたい、私《わたし》の心《こゝろ》は察《さつ》しておくれ、とかういふ間《ま》も心《こゝろ》は急《せ》く、峠《たうげ》は前《まへ》に控《ひか》へて居《ゐ》るし、爺《ぢい》や!
もし奧樣《おくさま》。
と土間《どま》の端《はし》までゐざり出《い》でて、膝《ひざ》をついて、手《て》を合《あは》すのを、振返《ふりかへ》つて、母衣《ほろ》は下《お》りた。
一|臺《だい》の腕車《わんしや》二|人《にん》の車夫《しやふ》は、此《こ》の茶店《ちやみせ》に留《とゞ》まつて、人々《ひと/″\》とともに手當《てあて》をし、些《ちつ》とでもあがきが着《つ》いたら、早速《さつそく》武生《たけふ》までも其日《そのひ》の内《うち》に引返《ひつかへ》すことにした
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