》りました。――母屋の方はそうも行かんが、清水があって、風通しの可《い》いせいか、離座敷には蚊は居ません。で、ちと薄ら寒いくらいだから――って……敷くのを二枚と小掻巻《こがいまき》。どれも藍縞《あいじま》の郡内絹《ぐんないぎぬ》、もちろんお綾さん、と言いました、少《わか》い人の夜のもの……そのかわり蚊帳は差上げません。――
(ちと美しい唇に、分けてお遣んなさいまし。……殿方の血は、殿方ばかりのものじゃありませんよ。)
と凄《すご》いような串戯《じょうだん》を、これは貴婦人の方が言って。――辞退したが肯《き》かないで、床の間の傍《わき》の押入から、私の床を出して敷いたあとを、一人が蚊帳を、一人が絹の四布蒲団《よのぶとん》を、明石と絽縮緬《ろちりめん》の裳《もすそ》に搦《から》めて、蹴出褄《けだしづま》の朱鷺色《ときいろ》、水色、はらはらと白脛《しらはぎ》も透いて重《かさな》って正屋《おもや》へ隠れた、その後《あと》の事なんですが。」
二十七
「二人の婦《おんな》が、その姿で、沓脱《くつぬぎ》の笹《ささ》を擦る褄《つま》はずれ尋常に、前の浅芽生《あさぢう》に出た空には、
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