》しいかも知れません。それだと直きそこに綺麗なのが湧《わ》いていますけれども、こんな時節には蛇が来て身体《からだ》を冷《ひや》すと申しますから。……)
 この様子では飲料《のみもの》で吐血《とけつ》をしそうにも思われないから、一息に煽《あお》りました。実はげっそりと腹も空いて。
 それを見ながら今の続きを、……
(ほんとに心細いんですわ。もう、おっしゃいます通り、こんな山の中で、幾日《いくか》も何日もないようですが、確か、あの十三四日の月夜ですのね、里では、お盆でしょう。――そこいらの谷の底の方に、どうやら、それらしい燈籠《とうろう》の灯が、昨夜《ゆうべ》幽《かすか》に見えましたわ……ぽっちりよ。)
 と蓮葉《はすは》に云ったが、
(蛍くらいに。)
 そのままで、わざとでもなく、こう崖へかけて俯向《うつむ》き加減に、雪の手を翳《かざ》した時は、言うばかりない品が備わって、気高い程に見えました。
(どんなに、可懐《なつか》しゅうござんしたでしょう。)
 たちまち悄《しお》れて涙ぐむように、口許が引しまった。
 見ると堪《たま》らなくなって、
(そのかわり、また、里から眺めて、自然こうやっ
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