》されよう。が、旅人があって、幸《さいわい》に通るとすると、それは直ちに犠牲《にえ》になる。自分はよくても、身代りを人にさせる道でない。
心を山伏に語ると、先達も拳《こぶし》を握って、不束《ふつつか》ながら身命に賭けて諸共《もろとも》にその美女《たおやめ》を説いて、悪《あし》き心を飜えさせよう。いざうれ、と清水を浴びる。境も嗽手水《うがいちょうず》して、明王の前に額着《ぬかづ》いて、やがて、相並んで、日を正射《まとも》に、白い、眩《まばゆ》い、峠を望んで進んだ。
雲から吐出されたもののように、坂に突伏《つっぷ》した旅人《りょじん》が一人。
ああ、犠牲《にえ》は代った。
扶《たす》け起こすと、心なき旅人《たびびと》かな。朝がけに禁制の峠を越したのであった。峰では何事もなかったが、坂で、躓《つまず》いて転んだはずみに、あれと喚《わめ》く。膝から股《また》へ真白《まっしろ》な通草《あけび》のよう、さくり切れたは、俗に鎌鼬《かまいたち》が抓《か》けたと言う。間々ある事とか。
先達が担いで引返《ひっかえ》した。
石動の町の医師を託《ことづ》かりながら、三造は、見返りがちに、今は蔓草《
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