す。
どれも抱着《だきつ》きもせず、足へも縋《すが》らぬ。絶叫して目を覚ます……まだそれにも及ぶまい、と見い見い後退《あとじさ》りになって、ドンと突当ったまま、蹌踉《よろ》けなりに投出されたように浅茅生《あさぢう》へ出た。
(はああ。)
と息を引いた、掌《てのひら》へ、脂《あぶら》のごとく、しかも冷い汗が、総身《そうみ》を絞って颯《さっ》と来た。
例の草清水《くさしみず》がありましょう。
日蝕《にっしょく》の時のような、草の斑《まだら》に黒い、朦《もう》とした月明りに、そこに蹲《しゃが》んだ男がある。大形の浴衣の諸膚脱《もろはだぬぎ》で、毛だらけの脇を上げざまに、晩方、貴婦人がそこへ投《ほう》った、絹の手巾《ハンケチ》を引伸《ひんの》しながら、ぐいぐいと背中を拭《ふ》いている。
これは人間らしいと、一足寄って、
(君……)
と掠《かす》れた声を掛けると、驚いた風にぬっくりと立ったが、瓶《かめ》のようで、胴中《どうなか》ばかり。
(首はないが交際《つきあ》うけえ。)
と、野太い声で怒鳴《どな》られたので、はっと思うと、私も仰向《あおむ》けに倒れたんです。
やがて、気のつい
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