横縦にがやがやと人影が映って、さながら、以前、この立場《たてば》が繁昌《はんじょう》した、午飯頃《ひるめしごろ》の光景《ありさま》ではありませんか。
入乱れて皆腰を掛けてる。
私は構わず、その前を切って抜けようとしました。
大胆だと思いますか――何《なあに》、そうではない。度胸も信仰も有るのではありません、がすべてこういう場合に処する奥の手が私にある。それは、何です、剣術の先生は足が顫《ふる》えて立縮《たちすく》んだが、座頭の坊は琵琶《びわ》を背負《しょ》ったなり四這《よつんば》いになって木曾の桟《かけはし》をすらすら渡り越したという、それと一般《ひとつ》。
希代な事には、わざと胸に手を置いて寝て可恐《おそろし》い夢を平気で見ます。勿論夢と知りつつ慰みに試みるんです。が、夢にもしろ、いかにも堪《たま》らなくなると、やと叫んで刎起《はねお》きる、冷汗は浴《あび》るばかり、動悸《どうき》は波を立てていても、ちっとも身体《からだ》に別条はない。
これです!
いざとなれば刎起きよう、夢でなくって、こんな事があるべき筈《はず》のもんじゃない、と断念《あきら》めは附けましたが。
突懸
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