らうと思《おも》ひながら、すかして蚊帳《かや》の外《そと》を見《み》たが、墓原《はかはら》をさまよつて、亂橋《みだればし》から由井《ゆゐ》ヶ濱《はま》をうろついて死《し》にさうになつて歸《かへ》つて來《き》た自分《じぶん》の姿《すがた》は、立《た》つて、蚊帳《かや》に縋《すが》つては居《ゐ》なかつた。
もののけはひを、夜毎《よごと》の心持《こゝろもち》で考《かんが》へると、まだ三|時《じ》には間《ま》があつたので、最《も》う最《も》うあたまがおもいから、其《その》まゝ默《だま》つて、母上《はゝうへ》の御名《おんな》を念《ねん》じた。――人《ひと》は恁《か》ういふことから氣《き》が違《ちが》ふのであらう。
底本:「鏡花全集 巻四」岩波書店
1941(昭和16)年3月15日第1刷発行
1986(昭和61)年12月3日第3刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:門田裕志
校正:鈴木厚司
2003年5月18日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://ww
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