たのでございますもの、疑《うたぐ》ってみました日には、当《あて》になりはいたしません。しかしまあ何でございますね、前触《まえぶ》が皆《みんな》勝つことばかりでそれが事実《まったく》なんですから結構で、私《わたくし》などもその話を聞きました当座は、もうもう貴方。」
と黙って聞いていた判事に強請《ねだ》るがごとく、
「お可煩《うるさ》くはいらっしゃいませんか、」
「悉《くわ》しく聞こうよ。」
判事は倦《う》める色もあらず、お幾はいそいそして、
「ええどうぞ。条《すじ》を申しませんと解りません。私《わたくし》どもは以前、ただ戦争のことにつきましてあれが御祈祷《ごきとう》をしたり、お籠《こもり》、断食などをしたという事を聞きました時は、難有《ありがた》い人だと思いまして、あんな鼻附でも何となく尊いもののように存じましたけれども、今度のお米のことで、すっかり敵対《むこう》になりまして、憎らしくッて、癪《しゃく》に障ってならないのでございます。
あんなもののいうことが当になんぞなりますものか。卜《うらない》もくだらない[#「くだらない」に傍点]もあったもんじゃあございません。
でございます
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