ら、互《たがひ》に聲《こゑ》を合《あ》はせて、左《ひだり》、左《ひだり》、左《ひだり》、左《ひだり》。
夏《なつ》のはじめに、よく蝦蟆賣《がまう》りの聲《こゑ》を聞《き》く。蝦蟆《がま》や、蝦蟆《がんま》い、と呼《よ》ぶ。又《また》此《こ》の蝦蟆賣《がまう》りに限《かぎ》りて、十二三、四五|位《ぐらゐ》なのが、きまつて二人連《ふたりづ》れにて歩《ある》くなり。よつて怪《け》しからぬ二人連《ふたりづ》れを、畜生《ちくしやう》、蝦蟆賣《がまうり》め、と言《い》ふ。たゞし蝦蟆《がま》は赤蛙《あかがへる》なり。蝦蟆《がま》や、蝦蟆《がんま》い。――そのあとから山男《やまをとこ》のやうな小父《をぢ》さんが、柳《やなぎ》の蟲《むし》は要《い》らんかあ、柳《やなぎ》の蟲《むし》は要《い》らんかあ。
鯖《さば》を、鯖《さば》や三番叟《さんばそう》、とすてきに威勢《ゐせい》よく賣《う》る、おや/\、初鰹《はつがつを》の勢《いきほひ》だよ。鰯《いわし》は五月《ごぐわつ》を季《しゆん》とす。さし網鰯《あみいわし》とて、砂《すな》のまゝ、笊《ざる》、盤臺《はんだい》にころがる。嘘《うそ》にあらず、鯖《さば
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