だ》すのに、ワシ[#「ワシ」に白丸傍点]は居《ゐ》るか、と言《い》ふ。此《こ》の方《はう》はどつちもワシ[#「ワシ」に白丸傍点]なり。
 お螻《けら》殿《どの》を、佛《ほとけ》さん蟲《むし》、馬追蟲《うまおひむし》を、鳴聲《なきごゑ》でスイチヨと呼《よ》ぶ。鹽買蜻蛉《しほがひとんぼ》、味噌買蜻蛉《みそがひとんぼ》、考證《かうしよう》に及《およ》ばず、色合《いろあひ》を以《もつ》て子供衆《こどもしう》は御存《ごぞん》じならん。おはぐろ蜻蛉《とんぼ》を、※[#非0213外字:「姉」の正字、第3水準1−85−57の木へんの代わりに女へん、504−14]《ねえ》さんとんぼ、草葉螟蟲《くさばかげろふ》は燈心《とうしん》とんぼ、目高《めだか》をカンタ[#「カンタ」に白丸傍点]と言《い》ふ。
 螢《ほたる》、淺野川《あさのがは》の上流《じやうりう》を、小立野《こだつの》に上《のぼ》る、鶴間谷《つるまだに》と言《い》ふ所《ところ》、今《いま》は知《し》らず、凄《すご》いほど多《おほ》く、暗夜《あんや》には螢《ほたる》の中《なか》に人《ひと》の姿《すがた》を見《み》るばかりなりき。
 清水《しみづ》を清
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