、昆布《こんぶ》を切込《きりこ》みたるなど色々《いろ/\》の餅《もち》を搗《つ》き、一番《いちばん》あとの臼《うす》をトンと搗《つ》く時《とき》、千貫《せんぐわん》萬貫《まんぐわん》、萬々貫《まん/\ぐわん》、と哄《どつ》と喝采《はや》して、恁《かく》て市《いち》は榮《さか》ゆるなりけり。
 榧《かや》の實《み》、澁《しぶ》く侘《わび》し。子供《こども》のふだんには、大抵《たいてい》柑子《かうじ》なり。蜜柑《みかん》たつとし。輪切《わぎ》りにして鉢《はち》ものの料理《れうり》につけ合《あ》はせる。淺草海苔《あさくさのり》を一|枚《まい》づゝ賣《う》る。
 上丸《じやうまる》、上々丸《じやう/\まる》など稱《とな》へて胡桃《くるみ》いつもあり。一寸《ちよつと》煎《い》つて、飴《あめ》にて煮《に》る、これは甘《うま》い。
 蓮根《はす》、蓮根《はす》とは言《い》はず、蓮根《れんこん》とばかり稱《とな》ふ、味《あぢ》よし、柔《やはら》かにして東京《とうきやう》の所謂《いはゆる》餅蓮根《もちばす》なり。郊外《かうぐわい》は南北《なんぼく》凡《およ》そ皆《みな》蓮池《はすいけ》にて、花《はな》開
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