》し、其《そ》の味《あぢ》辛《から》し、然《しか》も潔《いさぎよ》し。
北國《ほくこく》は天《てん》高《たか》くして馬《うま》痩《や》せたらずや。
大根曳《だいこひ》きは、家々《いへ/\》の行事《ぎやうじ》なり。此《こ》れよりさき、軒《のき》につりて干《ほ》したる大根《だいこ》を臺所《だいどころ》に曳《ひ》きて澤庵《たくあん》に壓《お》すを言《い》ふ。今日《けふ》は誰《たれ》の家《いへ》の大根曳《だいこひ》きだよ、などと言《い》ふなり。軒《のき》に干《ほ》したる日《ひ》は、時雨《しぐれ》颯《さつ》と暗《くら》くかゝりしが、曳《ひ》く頃《ころ》は霙《みぞれ》、霰《あられ》とこそなれ。冷《つめ》たさ然《さ》こそ、東京《とうきやう》にて恰《あたか》もお葉洗《はあらひ》と言《い》ふ頃《ころ》なり。夜《よる》は風呂《ふろ》ふき、早《は》や炬燵《こたつ》こひしきまどゐに、夏《なつ》泳《およ》いだ河童《かつぱ》の、暗《くら》く化《ば》けて、豆府《とうふ》買《か》ふ沙汰《さた》がはじまる。
小著《せうちよ》の中《うち》に、
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其《そ》の雲《くも》が時雨《しぐ》れ/\て、終日
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