、占地《しめぢ》いろ/\、千本占地《せんぼんしめぢ》、小倉占地《をぐらしめぢ》、一本占地《いつぽんしめぢ》、榎茸《えのきだけ》、針茸《はりだけ》、舞茸《まひだけ》、毒《どく》ありとても紅茸《べにたけ》は紅《べに》に、黄茸《きだけ》は黄《き》に、白《しろ》に紫《むらさき》に、坊主茸《ばうずだけ》、饅頭茸《まんぢうだけ》、烏茸《からすだけ》、鳶茸《とんびだけ》、灰茸《はひだけ》など、本草《ほんざう》にも食鑑《しよくかん》にも御免《ごめん》蒙《かうむ》りたる恐《おそ》ろしき茸《きのこ》にも、一《ひと》つ一《ひと》つ名《な》をつけて、籠《かご》に裝《も》り、籠《こ》に狩《か》る。茸爺《きのこぢゞい》、茸媼《きのこばゞ》とも名《な》づくべき茸狩《きのこが》りの古狸《ふるだぬき》。町内《ちやうない》に一人《ひとり》位《ぐらゐ》づゝ必《かなら》ずあり。山入《やまいり》の先達《せんだつ》なり。
 芝茸《しばたけ》と稱《とな》へて、笠《かさ》薄樺《うすかば》に、裏白《うらじろ》なる、小《ちひ》さな茸《きのこ》の、山《やま》近《ちか》く谷《たに》淺《あさ》きあたりにも群生《ぐんせい》して、子供《こども》に
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