安賣《やすうり》に限《かぎ》りしなるが、次第《しだい》に何事《なにごと》にも用《もち》ゐられて、投賣《なげうり》、棄賣《すてう》り、見切賣《みきりう》りの場合《ばあひ》となると、瀬戸物屋《せとものや》、呉服店《ごふくみせ》、札《ふだ》をたてて、がばり/\。愚案《ぐあん》ずるに、がばりは雪《ゆき》を切《き》る音《おと》なるべし。
水玉草《みづたまさう》を賣《う》る、涼《すゞ》し。
夜店《よみせ》に、大道《だいだう》にて、鰌《どぢやう》を割《さ》き、串《くし》にさし、付燒《つけやき》にして賣《う》るを關東燒《くわんとうやき》とて行《おこな》はる。蒲燒《かばやき》の意味《いみ》なるべし。
四萬六千日《しまんろくせんにち》は八月《はちぐわつ》なり。さしもの暑《あつ》さも、此《こ》の夜《よ》のころ、觀音《くわんのん》の山《やま》より涼《すゞ》しき風《かぜ》そよ/\と訪《おと》づるゝ、可懷《なつか》し。
唐黍《たうもろこし》を燒《や》く香《にほひ》立《た》つ也《なり》。
秋《あき》は茸《きのこ》こそ面白《おもしろ》けれ。松茸《まつたけ》、初茸《はつたけ》、木茸《きたけ》、岩茸《いはたけ》
前へ
次へ
全29ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング