と言《い》ひしはこれなるべし。あゝ又《また》雨《あめ》ぞやと云《い》ふ事《こと》を、又《また》ばんどりぞやと云《い》ふ習《なら》ひあり。
 祭禮《さいれい》の雨《あめ》を、ばんどり祭《まつり》と稱《とな》ふ。だんどりが違《ちが》つて子供《こども》は弱《よわ》る。
 關取《せきとり》、ばんどり、おねばとり、と拍子《ひやうし》にかゝつた言《ことば》あり。負《ま》けずまふは、大雨《おほあめ》にて、重湯《おもゆ》のやうに腰《こし》が立《た》たぬと云《い》ふ後言《しりうごと》なるべし。
 いつぞや、同國《どうこく》の人《ひと》の許《もと》にて、何《なに》かの話《はなし》の時《とき》、鉢前《はちまへ》のバケツにあり合《あは》せたる雜巾《ざふきん》をさして、其《そ》の人《ひと》、金澤《かなざは》で何《な》んと言《い》つたか覺《おぼ》えてゐるかと問《と》ふ。忘《わす》れたり。ぢぶき[#「ぢぶき」に白丸傍点]なり、其《そ》の人《ひと》、長火鉢《ながひばち》を、此《こ》れはと又《また》問《と》ふ。忘《わす》れたり。大和風呂《やまとぶろ》なり。さて醉《よつ》ぱらひの事《こと》を何《な》んと言《い》つたつ
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