瓜《たうなす》を、かぼちやとも、勿論《もちろん》南瓜《たうなす》とも言《い》はず皆《みな》ぼぶら。眞桑《まくは》を、美濃瓜《みのうり》。奈良漬《ならづけ》にする淺瓜《あさうり》を、堅瓜《かたうり》、此《こ》の堅瓜《かたうり》味《あぢはひ》よし。
蓑《みの》の外《ほか》に、ばんどり[#「ばんどり」に傍点]とて似《に》たものあり、蓑《みの》よりは此《こ》の方《はう》を多《おほ》く用《もち》ふ。磯《いそ》一峯《いつぽう》が、(こし地《ぢ》紀行《きかう》)に安宅《あたか》の浦《うら》を一|里《り》左《ひだり》に見《み》つゝ、と言《い》ふ處《ところ》にて、
(大國《おほくに》のしるしにや、道《みち》廣《ひろ》くして車《くるま》を並《なら》べつべし、周道《しうだう》如砥《とのごとし》とかや言《い》ひけん、毛詩《まうし》の言葉《ことば》まで思《おも》ひ出《い》でらる。並木《なみき》の松《まつ》嚴《きび》しく聯《つらな》りて、枝《えだ》をつらね蔭《かげ》を重《かさ》ねたり。往來《わうらい》の民《たみ》、長《なが》き草《くさ》にて蓑《みの》をねんごろに造《つく》りて目馴《めな》れぬ姿《すがた》なり。)
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