《ひら》く時《とき》、紅々《こう/\》白々《はく/\》。
木槿《むくげ》、木槿《はちす》にても相《あひ》分《わか》らず、木槿《もくで》なり。山《やま》の芋《いも》と自然生《じねんじやう》を、分《わ》けて別々《べつ/\》に稱《とな》ふ。
凧《たこ》、皆《みな》いか[#「いか」に白丸傍点]とのみ言《い》ふ。扇《あふぎ》の地紙形《ぢがみがた》に、兩方《りやうはう》に袂《たもと》をふくらましたる形《かたち》、大々《だい/\》小々《せう/\》いろ/\あり。いづれも金《きん》、銀《ぎん》、青《あを》、紺《こん》にて、圓《まる》く星《ほし》を飾《かざ》りたり。關東《くわんとう》の凧《たこ》はなきにあらず、名《な》づけて升凧《ますいか》と言《い》へり。
地形《ちけい》の四角《しかく》なる所《ところ》、即《すなは》ち桝形《ますがた》なり。
女《をんな》の子《こ》、どうかすると十六七の妙齡《めうれい》なるも、自分《じぶん》の事《こと》をタア[#「タア」に傍点]と言《い》ふ。男《をとこ》の兒《こ》は、ワシ[#「ワシ」に白丸傍点]は蓋《けだ》しつい通《とほ》りか。たゞし友達《ともだち》が呼《よ》び出《だ》すのに、ワシ[#「ワシ」に白丸傍点]は居《ゐ》るか、と言《い》ふ。此《こ》の方《はう》はどつちもワシ[#「ワシ」に白丸傍点]なり。
お螻《けら》殿《どの》を、佛《ほとけ》さん蟲《むし》、馬追蟲《うまおひむし》を、鳴聲《なきごゑ》でスイチヨと呼《よ》ぶ。鹽買蜻蛉《しほがひとんぼ》、味噌買蜻蛉《みそがひとんぼ》、考證《かうしよう》に及《およ》ばず、色合《いろあひ》を以《もつ》て子供衆《こどもしう》は御存《ごぞん》じならん。おはぐろ蜻蛉《とんぼ》を、※[#非0213外字:「姉」の正字、第3水準1−85−57の木へんの代わりに女へん、504−14]《ねえ》さんとんぼ、草葉螟蟲《くさばかげろふ》は燈心《とうしん》とんぼ、目高《めだか》をカンタ[#「カンタ」に白丸傍点]と言《い》ふ。
螢《ほたる》、淺野川《あさのがは》の上流《じやうりう》を、小立野《こだつの》に上《のぼ》る、鶴間谷《つるまだに》と言《い》ふ所《ところ》、今《いま》は知《し》らず、凄《すご》いほど多《おほ》く、暗夜《あんや》には螢《ほたる》の中《なか》に人《ひと》の姿《すがた》を見《み》るばかりなりき。
清水《しみづ》を清
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