また》ぐものはないと見えます。もたれなりにも櫛《くし》の歯のように揃《そろ》ってあります。
 これについて、何かいわれのございましたことか、一々《いちいち》女の名と、亥年《いどし》、午年《うまどし》、幾歳、幾歳、年齢とが彫《ほ》りつけてございましてな、何時《いつ》の世にか、諸国の婦人《おんな》たちが、挙《こぞ》って、心願《しんがん》を籠《こ》めたものでございましょう。ところで、雨露《あめつゆ》に黒髪《くろかみ》は霜《しも》と消え、袖《そで》裾《すそ》も苔《こけ》と変って、影ばかり残ったが、お面《かお》の細く尖《とが》った処《ところ》、以前は女体《にょたい》であったろうなどという、いや女体の地蔵というはありませんが、さてそう聞くと、なお気味が悪いではございませんか。
 ええ、つかぬことを申したようでありますが、客人の話について、些《ち》と考えました事がござる。客人は、それ、その山路《やまみち》を行《ゆ》かれたので――この観音《かんおん》の御堂《みどう》を離れて、」
「なるほど、その何んとも知れない、石像の処へ、」
 と胸を伏せて顔を見る。
「いやいや、其処《そこ》までではありません。唯《
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