87−64]《だいきえん》じゃ。
(万歳々々《ばんざいばんざい》、今夜お忍《しのび》か。)
(勿論《もちろん》、)
と答えて、頭のあたりをざぶざぶと、仰《あお》いで天に愧《は》じざる顔色《かおつき》でありました。が、日頃の行《おこな》いから[#「行《おこな》いから」は底本では「行《おこか》いから」]察して、如何《いか》に、思死《おもいじに》をすればとて、いやしくも主《ぬし》ある婦人に、そういう不料簡《ふりょうけん》を出すべき仁《じん》でないと思いました、果せる哉《かな》。
冷奴《ひややっこ》に紫蘇《しそ》の実、白瓜《しろうり》の香《こう》の物《もの》で、私《わたくし》と取膳《とりぜん》の飯を上《あが》ると、帯を緊《し》め直して、
(もう一度そこいらを。)
いや、これはと、ぎょっとしたが、垣《かき》の外へ出られた姿は、海の方へは行《ゆ》かないで、それ、その石段を。」
一面の日当りながら、蝶《ちょう》の羽《は》の動くほど、山の草に薄雲が軽く靡《なび》いて、檐《のき》から透《すか》すと、峰の方は暗かった、余り暖《あたたか》さが過ぎたから。
十九
降ろうも知れぬ。日
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