が落ちる。目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って、その水中の木材よ、いで、浮べ、鰭《ひれ》ふって木戸に迎えよ、と睨《にら》むばかりに瞻《みつ》めたのでござるそうな。些《ち》と尋常事《ただごと》でありませんな。
 詩は唐詩選《とうしせん》にでもありましょうか。」
「どうですか。ええ、何んですって――夢に家門《かもん》に入って沙渚《しゃしょ》に上《のぼ》る。魂《たましい》が沙漠《さばく》をさまよって歩行《ある》くようね、天河落処長洲路《てんがおつるところちょうしゅうのみち》、あわれじゃありませんか。
 それを聞くと、私《わたし》まで何んだか、その婦人が、幽閉されているように思います。
 それからどうしましたか。」
「どうと申して、段々|頤《おとがい》がこけて、日に増し目が窪《くぼ》んで、顔の色がいよいよ悪い。
 或時《あるとき》、大奮発じゃ、と言うて、停車場《ていしゃば》前の床屋へ、顔を剃《そ》りに行《ゆ》かれました。その時だったと申す事で。
 頭を洗うし、久しぶりで、些《ちと》心持《こころもち》も爽《さわやか》になって、ふらりと出ると、田舎《いなか》には荒物屋《あらも
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